Web広告における「フリークエンシー」とは何か、意味や仕組みを初心者向けに解説します。
また、運用で悩みがちな「最適な回数の目安」を媒体別(Google/Meta等)・目的別・商材別に一覧で紹介します。フリークエンシーキャップの設定方法も画像付きで解説。
目次
フリークエンシーとは
フリークエンシーは「1人のユーザーに広告が何回表示されたか」を示す、広告効果測定の重要指標のひとつです。
仕組み・計測方法
Cookie情報からユーザーを判別し、広告の接触回数を計測します。ブラウザごとに計測されるため、同じユーザーでも複数ブラウザを利用している場合は別のユーザーと判断され、反対に、共用端末などで複数人が同じブラウザを利用した場合は同一ユーザーとみなされます。
ひとつの広告あたり、ユーザーに何度表示されているかの平均値が知りたい場合は、以下の計算式で求められます。
| フリークエンシー=インプレッション数(広告表示回数) ÷ リーチ数(広告が表示されたユーザー数) |
フリークエンシーの重要性
特定の広告を何度表示したかを確認することで、「どの程度認知されたか」や「どの程度訴求できたか」をはかることができます。
1人のユーザーに同じ広告を複数回見せることで、商品の購買意欲を上げたり認知度を高めたりすることが可能です。しかし同時に、複数回広告を見せることはユーザーの嫌気を誘うことにも繋がります。
これらのことから、広告を効果的に配信するためには、フリークエンシーの回数の調整が非常に重要になると言えるでしょう。
フリークエンシーとリーチの違い
リーチは「広告が何人のユーザーに表示されたか」をあらわす指標です。広告のリーチを多く獲得することで、自社商品の認知拡大や見込み客の獲得に繋げられます。
フリークエンシーをうまく調整して自社のターゲットに最適な回数で広告を表示できれば、個人に対して商品やサービスの関心度を高めることが可能です。対してリーチを多く獲得することは、自社の商品を知るユーザーの数を増やすことに繋がり、自社の見込み客になり得る潜在層の母数を増やせます。
1人のユーザーの関心度や購買意欲を高めたいならフリークエンシー、より多くのユーザーに商材の存在を知って欲しいならリーチの数値を重視するのが一般的です。
フリークエンシーキャップ(上限設定)の活用
フリークエンシーキャップは、ひとりのユーザーに一定期間に表示する広告の回数を制限できる機能です。たとえば、「1日あたり5回まで」と設定すれば、それ以上対象ユーザーに同じ広告は表示されません。
フリークエンシーは多すぎても少なすぎてもデメリットがあり、フリークエンシーキャップを使いこなすことでWeb広告運用の効果を最大化できます。
フリークエンシーが高すぎる場合に起こること
ユーザーの広告疲れ
フリークエンシーが高すぎると同じ広告を何回も表示することになるので、ユーザーの飽きに繋がります。実際、SNSなどを見ている際に「最近この広告よく流れてくるな」と思ったことは一度や二度ではないでしょう。
ユーザーが楽しみにしているコンテンツの視聴前にしつこく同じ広告を表示してしまったら、たとえ興味のある商品を紹介する広告であっても不快感を持たれることは避けられません。
ブランドイメージ毀損のリスク
ひとりのユーザーに過剰に広告を表示させてしまうと、自社や自社商品に対する嫌悪感やネガティブなイメージを与える危険性があります。
ユーザーの広告疲れが続くと、広告だけにとどまらず、自社や自社商品へのマイナスイメージが蓄積されていきます。この状態が続くと、ブランドイメージの毀損にまで繋がるおそれがあるので注意が必要です。
費用対効果(ROI)の悪化
コンバージョンを獲得しにくいユーザーに何度も広告を配信し続けることで、クリック率が下がる危険性もあります。クリック率が下がるとクリック単価やコンバージョン獲得単価に悪影響が出ます。
売上に繋がらないユーザーに広告を無駄打ちすることになり、結果的にCPA高騰・ROI悪化を招きます。この状態でフリークエンシーの回数を増やして配信しても成果は見込めません。
フリークエンシーが低すぎる場合に起こること
広告の認知が広がらない
商品の認知拡大が運用目的の場合、フリークエンシーの回数が少なすぎると十分な認知に至らないケースがあります。
特に新商品や認知度の低い商品の認知を獲得するには、1人のユーザーに対して少なくとも2〜3回以上広告を見せる必要があります。1回でも全く効果がないわけではありませんが、あまりにも表示回数が少ないと記憶に残らず、狙った広告効果が得られなくなります。
コンバージョンに繋がりづらい
コンバージョンの獲得が運用目的の場合でも、フリークエンシーが低すぎると獲得数が伸びづらくなります。
特に、購入までの検討期間が長い不動産やBtoBなどの高額商品は、フリークエンシーの回数が少なすぎるとコンバージョンを獲得しにくい傾向にあります。検討期間が長くなる分、定期的に広告を表示しないとユーザーが商品の存在を忘れてしまうからです。
フリークエンシーが多くなりすぎることに過敏になってしまうと、コンバージョンの獲得数の最大化から遠のいてしまうので注意してください。
フリークエンシーキャップで設定できる条件
フリークエンシーキャップの設定では、配信する期間と回数、階層などを設定できます。
期間と回数の詳細は以下のとおりです。
| 配信期間 | 回数制限の有効期間を日、週、月単位で設定 |
| 制限回数 | ひとりのユーザーに表示する上限回数を1~100の範囲で設定 |
階層はキャンペーン・広告グループ・広告の3つにわかれています。キャンペーンが最大の範囲で、広告が最小の範囲になっています。
| ①キャンペーン | 選択したキャンペーン全体にフリークエンシーキャップの設定が判定される | 全ての広告クリエイティブの接触上限をまとめて管理したい場合 |
| ②広告グループ | キャンペーン内にある特定の広告グループ全体にフリークエンシーキャップの設定が反映される | 主に特定のターゲット(オーディエンス)に対して接触回数をコントロールしたい場合 |
| ③広告 | 選択した広告にのみ、フリークエンシーキャップの設定が反映される | 広告疲れ(クリエイティブ消耗)を防ぎたい場合 |
フリークエンシーの最適な回数は?
フリークエンシーの概要を確認したところで、次はフリークエンシーの最適な回数について見ていきましょう。
最適値はケースによって異なる
フリークエンシーの回数は多すぎても少なすぎてもいけません。たとえば、フリークエンシーの回数が多すぎる場合、ユーザーが広告をうっとうしく感じてクリック率が下がり、クリック単価などが上がる傾向にあります。この場合、コンバージョン獲得単価も高くなることが多いです。
フリークエンシーの最適な回数を見極めるには、自社の広告運用における目的や扱っている商材・業界の性質や特性から推測する必要があります。「購入するかどうかを即決できる商材か?」や「不動産やBtoBのような長期間の検討が必要になる商材か?」などを基準に判断します。
【媒体別】フリークエンシー回数目安
| Meta広告(Facebook / Instagram) | 1週間あたり:4〜8回
1日あたり:1〜2回までが許容範囲 |
クリエイティブ中心の媒体であり、広告疲れまでのスピードが早いため、特に獲得系はクリエイティブの鮮度が重要。 |
| Google ディスプレイ(GDN)
Yahoo! 広告(ディスプレイ) |
1週間あたり:3〜7回
1ヶ月あたり:10〜20回程度 |
表示される範囲は広いが流し見するユーザーも多いため、認知系は接触回数を増やす必要あり。 |
| YouTube 広告 | 1週間あたり:3〜5回
1ヶ月あたり:6〜12回 |
動画は1回のインパクトが強く、過剰に表示すると逆効果になる恐れあり。 |
| TikTok広告 | 1週間あたり:5〜9回
1日あたり:1〜2回 |
Meta以上にクリエイティブ消耗が激しい。短期回転で複数クリエイティブ運用が前提。 |
| X(旧Twitter)広告 | 1週間あたり:4〜10回
1日あたり:1〜3回 |
回遊性が高く、広告が高速で流れていくため、接触回数が多くても許容されやすい。 |
【目的別】フリークエンシー回数目安
| 認知拡大
(ブランド認知) |
期間:7〜14日間
1週間あたり:3〜7回 |
複数回接触することで認知は大きく上がるが、過剰接触はブランドリフト(好意度、購買意向の向上)が頭打ちになるため注意。 |
| コンバージョン獲得
(獲得目的) |
期間:7〜30日間
1ヶ月あたり:7〜12回 |
1度の広告表示でCVするケースは少ないため、認知拡大よりもやや期間を長めに取りながら適切な間隔でアプローチが必要。 |
| リターゲティング
(再訴求) |
期間:3〜7日(短め)
1週間あたり:5〜12回 |
高確度でCVに繋がるユーザーのため接触回数は多くてOK。ただし 1日1回ペースが限界で、過剰接触は逆効果。 |
【商材別】フリークエンシー回数目安
| 食品・日用品・化粧品など
(低価格帯EC) |
1週間あたり:5〜10回 | 購買ハードルが低いため、短期間で複数回接触することで一気に購買意欲を上げる |
| アパレル・雑貨など
(中価格帯EC) |
1週間あたり:3〜7回 | 日用品よりは購買ハードルが上がるため、ややペースを落としながら確実に訴求していく |
| 家具・家電など
(高価格帯EC) |
1ヶ月あたり:5〜10回 | 高額になるほど検討期間も伸びる傾向にあるため、長期的に複数回接触する必要がある |
| SaaS(BtoB・toC問わず) | 1ヶ月あたり:4〜12回 | 検討期間の目安が1〜3ヶ月と長期にわたる。マス広告など他の施策も同時に行う場合は総合的な接触回数を考慮する必要あり。 |
| 来店型サービス(美容院、飲食、ジム、歯科など) | 1週間あたり:4〜8回 | 日常的に「思い出してもらう」必要があるため、やや多めに接触してもよい |
上記の回数はあくまでも目安です。これらを参考に、自社のターゲットや扱う商材、広告出稿期間、予算などの複数の要素を考慮してテストを行い、最適な回数を探りましょう。
【媒体別】フリークエンシーを確認・設定する方法
次は実際に設定する方法と確認する方法を見ていきましょう。
Google広告
フリークエンシーの確認方法
- 管理画面にあるキャンペーン単位の「表示項目の変更」を選択
- 「リーチの指標」の「平均表示頻度(ユーザーあたり)」にチェックを入れる
- 「適用」ボタンを選択
フリークエンシーキャップの設定方法
- 管理画面の左にあるキャンペーンのアイコンを選択
- キャンペーン画面を表示させる
- 設定を行うキャンペーンにカーソルを合わせると出てくる「歯車」マークを選択
- 「その他の設定」を選択
- 「フリークエンシーの管理」の欄に進む
- 希望の条件を設定する
- 「保存」ボタンを押す
Yahoo!広告
フリークエンシーの確認方法
- 管理画面で確認したいキャンペーンの「全てのキャンペーン」の画面を選択
- 「フィルター」横にある「+追加」をクリック
- 「基本項目」の中にある「フリークエンシーキャップ(期間/回数/階層)」のうち、確認したい項目を選択
- 検索条件を入力
- 「適用」ボタンを押す
フリークエンシーキャップの設定方法
- 管理画面の左にある「全てのキャンペーンから」設定したいキャンペーンを選ぶ
- 「キャンペーン設定」→「編集」の順に選択
- フリークエンシーキャップの設定欄にある「指定する」にチェックを入れる
- 上限回数、適用期間、設定したい階層をそれぞれ設定
- 「保存」ボタンを押す
Meta広告
フリークエンシーの確認方法
- 広告マネージャで確認するキャンペーンを選ぶ
- 「列」ボタンを押し、「列をカスタマイズ」を選ぶ
- 「配分」の中にある「フリークエンシー」にチェックを入れる
- 「適用」ボタンを押す
フリークエンシーキャップの設定方法
- 広告マネージャで新しいキャンペーンを作成
- 「認知」「検討」「コンバージョン」の中から目的を選ぶ
- キャンペーンの詳細を入力する
- 次の画面で「オプションの表示」を選ぶ
- フリークエンシーコントロールの設定項目が出るので上限回数、適用期間を設定する
フリークエンシーと合わせて考慮すべき施策
この項目では、フリークエンシーの各種調整と合わせて行うべき施策について紹介します。
広告クリエイティブの最適化
広告を最適化するには、フリークエンシーの上限数を設定するだけでは足りません。定期的にクリエイティブを差し替えたり、ABテストで最適な訴求を探したりなどを同時に行うことが大切です。
クリエイティブについては、同一ユーザーに同じ広告を見せても飽きが来ないようなデザインにしたり、画像や動画を複数パターン用意したりして新鮮味を加えましょう。具体的には、デザインのメインカラーやテキストのフォント・色を変えたり、新しい画像や動画を作成したり、クリエイティブの配置を変更したりなどが考えられます。
訴求内容については、訴求ポイントをスペックから価格面に切り替えたり、クリエイティブで訴求する内容を商品の外見から中身に変更したりなどがおすすめです。
切り口を変えた訴求や変更点をABテストにかけて効果を確認しつつ、最適化していきましょう。
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ターゲティングの見直し
ターゲティング設定の見直し、変更も有効な手法です。現在のターゲティング範囲で多くのユーザーに広告を届けたと感じたなら、新たなターゲティング設定の条件を検討しましょう。
ターゲティングを広げる場合の例
・興味・関心カテゴリを“隣接領域”まで拡張する
| 例:
ランニング → フィットネス/健康/アウトドア 美容医療 → スキンケア/化粧品 |
・購買行動・検索行動ベースのオーディエンスを追加する
| 例:
類似価格帯の商品購入者 関連ワードを直近で検索したユーザー 競合カテゴリを閲覧したユーザー |
・年齢・性別・地域などのデモグラフィック条件を緩める
| 例:
女性25歳〜34歳 → 女性25歳〜44歳 東京23区 → 関東エリアまで 30代男性 → 25歳〜44歳男性まで |
そのほか、Meta広告を筆頭に、効率的に似た属性を持った新規顧客に配信できる「類似オーディエンス」という機能があるなど、媒体ごとに様々なターゲティング手法があります。
Cookie規制とフリークエンシー管理の今後
Cookie規制とは、プライバシー保護の観点から国やブラウザがサードパーティCookieの利用を制限する取り組みのことです。サードパーティCookieの利用が制限されると、正確なフリークエンシー計測が困難になり、同じユーザーに想定以上の回数で広告が表示される危険性があります。
対策としては、ファーストパーティCookieの利用やコンバージョンAPIの活用といった「Cookieに依存しない運用」を確立することが重要です。ファーストパーティCookieはユーザーの承諾を得て収集したデータなので、プライバシー保護の観点からもサードパーティCookieのような制限は受けません。
規制においてはすでに全面廃止しているブラウザもあり、Googleも2024年7月に撤回されているものの、当初はサードパーティCookieを段階的に廃止していく方針を示しており、今後も引き続き世の中の動向をモニタリングしていく必要があるでしょう。






