前回までは、「定量と定性の統合」や、成果を組織の型にする「言語化」など、マーケティングにおいていかに事象を深く解体し、考えるかについてお話ししてきました。
しかし、深く考えることと「実行が遅いこと」は全く別の問題です。今回は、分析や思考を実際の行動へと変換する「推進力」についてお話しします。
100点の正解を探す「終わらない準備」
「まだデータが足りないから、もう少し市場調査をしよう」
「完璧な戦略ができるまで、新しい広告施策を出すのは待とう」
マーケティングの現場では、慎重になるあまり、こうした「終わらない準備」に陥ってしまうことがよくあります。また、外部のパートナー企業も失敗を恐れ、「どうしますか?」と指示待ちになり、プロジェクト全体が足踏みしてしまうケースも少なくありません。
確かに、勘や思いつきで動くのは危険です。しかし、変化の激しい市場において「すべてのデータが揃う」ことなどあり得ません。100点の正解を探し求め、いつまでも施策を世に出さないのは、事業にとって目に見えない大きな機会損失です。
プロフェッショナルは「正解」ではなく「方針」を決める
私たちKURO HOLDINGSの行動指針(KH CODE)には、「ディシジョン(意思決定)する力」という言葉があります。
情報が不完全なとき、「正解がわからないから止まる」というのは、厳しい言い方をすれば当事者意識の欠如であり、誰かに判断の責任を預けてしまっている状態です。
プロフェッショナルとは、すべての情報が揃っていなくても、今ある事実をもとに「私はこうすべきだと考える」と、意思と責任を持って方針を定める人のことを指します。
「正解を当てること」をゴールにしてしまうと、失敗が怖くて動けなくなります。しかし、ディシジョンとは「正解を当てること」ではなく、「仮説と決断をもって最速で行動し、市場からのフィードバックを得て、自ら正解に近づけていくこと」なのです。
不確実な状況を突破する「スピード」
この「ディシジョン」を支えるのが、「スピードは価値」というもう一つの行動指針です。どんなに素晴らしいLPや広告のアイデアも、実行が遅れた瞬間にその価値を失います。「完璧な状態にしてから出そう」と時間をかけている間に、顧客の感情も市場のトレンドも移り変わってしまうからです。
もちろん、コーポレートサイトの全面リニューアルや新規事業の立ち上げなど、投資規模が大きく失敗が許されないプロジェクトにおいて、「市場に出す前に100点に近い正解を固めたい」と慎重になるのは当然の判断です。私たちもプロフェッショナルとして、最上流の「誰にどんな価値を届けるのか(Design)」という戦略設計においては、一切妥協せずに時間をかけます。
しかし、どれだけ会議室で議論を重ねても、市場に出す前に「完璧な100点」を証明することは誰にもできません。 だからこそ私たちは、「絶対に外してはいけない本質」を固めた上で、検証可能な形で最速で市場に問いかけます。
最初から一発勝負の完成品を目指して足踏みするのではなく、実際の顧客の反応(データと感情)を見ながら、誰よりも早く軌道修正を重ねて「本当の100点」へと磨き上げていくのです。
この「仮説思考」と「圧倒的な実行スピード」の掛け合わせこそが、不確実な状況を突破し、事業を非連続に成長させるための最大の推進力となります。
まとめ
もし今、あなたの組織やプロジェクトが「完璧なデータ」を待って足踏みしているなら、勇気を持って「70点で実行する」決断を下してみてください。市場に出して初めて得られるリアルな反応こそが、次の確かな一手を生み出します。
次回は、こうした思考や決断を支える最も重要な土台についてお話しします。 「なぜ私たちは『考える力』を何より大事にするのか ― 施策の前に事業を理解する組織OS ―」。私たちの組織の根幹に迫ります。