これまで、マーケティングにおいて「目的(Design)」から考える重要性や、数字の裏にある「感情の翻訳」、そして「不確実な中での決断」など、実行の裏側にある思考の型をお話ししてきました。
今回は、私たちが日々さまざまなプロジェクトに向き合う中で見えてきた、ある本質的な問いについてお話しします。 「成果が出るプロジェクトと、うまくいかないプロジェクトの違いは一体どこにあるのか?」
予算が潤沢だから成功するわけでも、商材がニッチだから失敗するわけでもありません。成否を分けるのはもっと根源的な、「プロジェクトの構造設計」の違いにあります。
うまくいかないプロジェクトの共通点:「足し算」の限界
成果が出ず、途中で行き詰まってしまうプロジェクトには、明確な共通点があります。 それは、外部パートナーとの関係性が「発注者と作業者」にとどまり、目的が共有されないまま「言われたことだけをこなす構造」になっていることです。
「CPAをこれくらいで合わせたいので、この広告を回してください」
「競合がやっているような、こういうデザインのLPを作ってください」
こうした手段の指示に対し、そのまま実行(Operation)だけを請け負う関係性。一見スムーズに進行しているように見えますが、ここに「なぜそれをやるのか(Design)」という上流の問いが存在していません。
目的や戦略が空洞化したまま、個別の作業だけが進行するプロジェクトでは、どれだけ優秀な人材が参加しても「1+1=2」の足し算、あるいはそれ以下の成果しか生まれません。問題が起きたときも「指示通りにやりました」「いや、もっとうまくやってほしかった」という責任の押し付け合いになり、プロジェクトは停滞します。
成果が出るプロジェクトの共通点:「目的の共有と再定義」
一方で、目覚ましい成果を上げ、事業が非連続に成長するプロジェクトには、最初の段階で「目的の共有と再定義」が行われているという共通点があります。
成功するプロジェクトにおいて、最初から言われた通りの作業が始まることはありません。 「売上を上げたい」という表面的な要望の奥にある、「この事業で社会をどう変えたいのか」「顧客のどんな悩みを解決したいのか」という熱い思いを預かり、事業の構造を解体するプロセスが必ず存在します。
そして、「今の課題は新規の広告ではありません。まずは既存顧客への価値翻訳(ページ改修)からやり直しましょう」と、事業の本質から戦略を引き直し、共に構造を創り上げていくのです。
成功を「必然」にする組織の仕組み
こうした本質的な議論や設計を、一部の「個人のセンス」や「偶然」に依存させてしまっては、組織的な成果は生み出せません。 だからこそ、私たちが何よりも大切にしているのが、「考える力」や「人間としてのスタンス」を組織全体の基本ソフトとして実装することです。
「思いを預かる」「プロセスの透明性」「バッドニュース・ファースト」「ディシジョンする力」。 クライアントの事業への思いを自分ごととして引き受け、不確実な状況でも仮説を立てて方針を決め、悪い知らせほど真っ先に共有して軌道修正を図る。
こうした哲学と行動指針(KH CODE)が土台にあるからこそ、単なる作業の足し算ではなく、「1+1=3」の非線形な価値増幅を必然の構造として生み出すことができるのです。
まとめ
自社の事業の価値を、もっと正しく世の中に届けたい。 そう願ったとき、外部のパートナーに求めるべきは「作業の代行」ではなく、「共に事業の価値を翻訳し、社会へ循環させるための構造」を創り上げるプロセスです。プロジェクトの成否は、この最初の構造設計で全てが決まります。
次回は、この私たちが何度も口にしている「1+1=3」という概念について、さらに深く掘り下げます。 【第16回】成果を「単純な足し算(1+1=2)」で終わらせない。「1+1=3」の意思決定が事業に何をもたらすか。ご期待ください。