【第9回】戦略とは「選ばないこと」を決める作業である ― 選択と集中、優先順位の設計 ― | KURO HOLDINGS株式会社

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2026/07/30

【第9回】戦略とは「選ばないこと」を決める作業である ― 選択と集中、優先順位の設計 ―

  • KURO HOLDINGSのマーケティング哲学書
KURO HOLDINGSのマーケティング哲学書9

前回は、「売上が上がらない」という複雑な問題を因数分解し、課題の根っこを特定する思考法についてお話ししました。広告の集客力、サイトの導線、リピート施策など、因数分解を進めると「改善すべき課題」がいくつも見えてきます。

 

しかし、ここで多くの企業が陥りがちな罠があります。 見つかった課題に対して、「よし、来月から広告もSNSもSEOも、全部同時に改善しよう!」と一斉に施策を走らせてしまうことです。

「あれもこれも」が引き起こすリソースの分散

特にマーケティング予算や人材が限られている環境において、「すべてをやろうとする」ことは、致命的な失敗を招きます。

 

例えば、月額100万円の予算があるとして、それを5つの施策に20万円ずつ分散させたとします。本来、ある市場で成果を出すためには最低でも50万円の投下が必要だった場合、20万円の施策は「少し足りない」のではなく、「まったく意味をなさない」という結果に終わります。

 

限られたリソースを分散させた結果、どの施策も中途半端になり、誰の記憶にも残らない。足し算の思考で動いた結果、1+1が0.5になってしまう。これが「戦略不在」が引き起こす悲劇です。

戦略とは「選ばないこと」の決断である

マーケティングの基本は「選択と集中」だと言われますが、実際に現場で「集中」するのは非常に勇気がいります。 「競合がやっているから、うちもSNSをやらないと不安だ」「せっかくの機会だから、あれもこれも伝えておきたい」という心理が働くからです。

 

だからこそ、私たちがすべての業務の土台としている思考プロセス「DSO(Design / Strategy / Operation)」において、Strategy(戦略)のフェーズで最も重きを置いているのは「何をやるか」ではなく、「何をやらないか」を決めることです。

 

予算や時間が無限にある企業など存在しません。「今はSNSをやらない」「今は新規獲得広告の予算を絞る」といった、捨てる決断こそが不可欠なのです。

どこに集中すれば「レバレッジ」が効くかを見極める

では、何を捨てて、何に集中するべきなのか。ここが成果を分ける最大の分岐点になります。これは、単に「予算が足りないから施策を減らそう」という消極的な選択ではありません。 前回お話しした「因数分解」によって事業構造を解体した上で、「どこに一点集中すれば、最もレバレッジが効き、事業全体が非連続に大きく動くか」を事実に基づいて見極める作業です。

 

例えば、「新規獲得のCPAが高騰しているが、サイトのCVRも極端に低い」という状況であれば、アプローチは明確になります。 「今は新規獲得の広告予算を止めてでも、サイト内の価値翻訳=CVR改善に全リソースを集中させる」という決断です。穴の空いたバケツに水を注ぐのをやめ、まずはバケツの穴を塞ぐことに一点突破する。土台となる構造が直れば、その後再開した広告の成果は以前の何倍にも跳ね上がります。

 

不確実な状況でも、データと顧客視点から「構造優位からの勝ち筋」を見つけ出し、意思と責任を持って「選ばないこと」を決める。この戦略設計のプロセスがあるからこそ、限られた予算のプロジェクトであっても、成果を単純な和以上(1+1=3)に増幅させることができるのです。

まとめ

もし今、「あれもこれもやらなきゃいけない」と現場が疲弊しているなら、勇気を持って「やらないこと」を決めてみてください。 戦略とは、すべてを完璧にこなすことではなく、勝つべき場所を見極め、そこに圧倒的な熱量を注ぎ込むための決断なのです。

 

次回は、こうした戦略を立てる前段階、「何から始めればいいか分からない」というご相談に対し、私たちが最初の打ち合わせで“必ず問うこと”についてお話しします。

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